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携帯電話の試作金型製造を中心に、国内でも数社しかない光ナノ超精密金型製造を行っている神高金型株式会社。常に最先端技術を取り入れ、様々な工夫を凝らし、独自のノウハウを蓄積しつつ、日々前進しています。

▲神高金型株式会社 本社
はじめに神高金型株式会社は1967年に設立して以来、常に新しいものを追求する時代の先駆け企業として飛躍し続けている。設立以来、プラスチック金型の設計・製作を中心に事業を展開。金型部では、主にNTTドコモおよびau携帯電話全般のモックアップ(店頭用)金型を作成。2000年からは、金型とは全く違う貿易部を設置。ベッド関連製品・AV機器・食品などを取り扱い、新たな事業展開も行っている。最近では、プリズム事業部を立ち上げ、WorkNCによる光ナノ超微細加工で新たなビジネスを展開している。WorkNCを導入してから8年。神高金型での、WorkNCによる小径工具微細加工の現状を、大塚社長および現場を統括している福島課長にインタビューした。

Q. WorkNC導入の背景は?
A.WorkNCを最初に導入したのは、1999年3月です。導入理由は何と言ってもWorkNCの計算時間の速さです。金型作成の仕事は「時間」=「お金」です。WorkNCを導入したことで、CAM作業にかかる時間が1/3に短縮されました。
しかし、2年前まではWorkNCを使いこなせておらず、コア型にしか使っていませんでした。キャビはどうしても面精度が要求されるため、「細かいものには向いていない!」「面粗度が悪い!」という印象を持っていたWorkNCでは無理だと思っていたのです。そのため、キャビ用にGRADE(旧日立造船)コア用にWorkNCと使い分けていました。しかし、納期短縮・加工パスの作成時間短縮を実現するためには、WorkNCの計算時間の速さが必要不可欠でした。
そこで、WorkNCの特徴を詳細に検証、加工機や工具との相性を研究し、弊社独自のノウハウを蓄積していきました。そして2005年度より、キャビにもWorkNCで充分対応できることを実証しました。現在では5台のWorkNCを導入し、CAM作業のすべてを、WorkNCのみでおこなっています。正直GRADEを使用していたときには、1週間かけて作っていたデータが、WorkNCでは4日で可能となり、約40%近いスピードアップを実現できました。実際、削っている時間よりもデータ作成時間の方が遅く、データ待ちになっていたこともありましたが、その問題はWorkNCによって解消されました。
機械を購入すれば、それだけですぐに加工できると思っていると、CAMは後から購入することになり、「CAMは何でも良い!」と思いがちです。しかし、CAMと機械との相性というものがあります。相性が悪いと、精度を求められる加工はできません。実はWorkNCはYASDA、MAKINOとの相性が非常に良いのです。これは加工テストでも実証されています。WorkNCを増設していった理由はそこにあります。 (大塚社長、福島課長)

Q. WorkNCを活用する上での工夫点をいくつか教えて下さい?
A. まず、基本データは7種類(@キャビ用(大)Aキャビ用(小)Bコア用(本体)Cコア用(ワク用)Dスライド用 E小入れ子用A F小入れ子用B)作成しており、*標準ファイルとして登録してあります。標準ファイルを利用することで、新入社員でも同様のデータ作成が可能になりました。さらに仕事の効率を図るため、夜間にバッチ計算をかけ、朝にはNCデータが出来ている状態にしています。
再荒加工では、Zレベル隅部加工を使用しています。最初の大荒加工を5Rのボールで加工し、中仕上げを3Rで加工するのですが、5Rの次にいきなり3Rだと、コーナー部の負荷がかかりすぎて工具が折れてしまう危険性があります。そこで、中仕上げの前に、ワンクッション中仕上げで使う工具と同じ3Rの工具で、コーナー部だけをある程度落としておくのです。その加工にZレベル隅部加工を利用しています。Zレベル隅部加工のパスを使う理由は、上から下へ(Zレベルで)パスが作成されるため、工具の負荷があまりかからずにコーナー部を落としていけるからです。
仕上げでは、75度以上の急斜面部を等高線仕上げ加工で、それ以外の緩斜面を走査線仕上げ加工で加工しています。もちろん中仕上げでは、速度重視のため、等高線仕上げ加工+等高線最適化加工(面沿い)の組合せですが、面重視の仕上げ工程では、等高線最適化加工(面沿い)はピック痕が残ってしまうため、承認時にNGになってしまうのです。そこで、走査線仕上げを使用するのですが、ここでも少し工夫して切削方向を「-45°」「片方向」に設定しています。45°方向で加工すると、工具の負荷を軽減させることができ、何より仕上がり面が綺麗に見えるのです。また「片方向」に設定するのは、面を綺麗に仕上げるため、極力ダウンカットで加工したいためです。
また隅部加工の工夫として、まず全体に面沿い隅部加工でパスを作成し、立ちの深い形状部をカーブで囲い、パス編集機能でカーブ内のパスを一気に削除します。以後はそのカーブを利用し、先程パス削除をおこなったカーブ内のみに、Zレベル隅部加工のパスを作成していきます。ここでも少し工夫して、削り残りが無いように面沿いとZレベルのパスがオーバーラップするようにパスを作成しています。あくまで工具長が長く必要な箇所は、工具の負荷を考慮して、上から下に向かって加工できるZレベル隅部加工を使っています。現在ではZレベル隅部加工の使用頻度が一番高いですね。 (福島課長)
Q. WorkNCのメリットは?
A. やはり操作性と安定性です。WorkNCは初心者でも少しの教育でスムーズに操作できるので、CAM作業を熟知していなくても、使いこなすことができるのです。データは加工を知っている人間が作成するのが最も良いと思います。実際私自身が加工現場上がりですので、私がそれらを伝えることで、加工現場に則したデータ作成ができています。またWorkNCのタフさ(安定性)は抜群です。 (福島課長)
Q.今後の目標は?
A. 今後はさらなる削りあがりの良さの追求をしていきます。直彫り箇所も増やしていきたいですね。
また将来的には、CAD/CAM/加工現場を完全に切り分けていきたいと思っています。CAMと現場を切り分けられるのも、WorkNCにすでに加工ノウハウが組み込んであるため、加工現場でCAM作業をおこなう必要性が無くなったためです。
そして、今後はプリズム事業部(超精密微細溝加工)に力を入れていきたいと思っています。単結晶ダイヤモンドバイトを使用した液晶導光板などの超精密溝加工のことです。日本でもまだ数社しか加工できないもので、弊社としては今後、事業の中心として展開していきたいと思っています。
会社全体の目標としては、今まで以上に、社員が希望をもてるような会社作りをしていきたいと思っています。 (大塚社長)


■加工テスト概要加工物:DoCoMoF506i (富士通製)モックアップ携帯電話金型キャビ形状 3タイプ
(@電極使用、A完全直彫り磨きレス、B完全直彫り磨きあり)
目的:携帯電話金型の直彫り加工の可否
電極使用時と直彫り加工時のデータ比較
場所:神高金型株式会社
工具:WXLシリーズ (オーエスジー製)
CAM:WorkNC (セスクワ製)

■加工時間比較(放電vs直彫り)

■メリット・デメリット比較

■完全直彫り加工の実現について「基本的には携帯電話の金型は、メーカーに電極を持ち込んで『マスター承認』を行います。しかし近年、コスト削減や海外での金型生産などに伴い、マスター承認を行わず、画像承認で済ませるメーカーが実際に数社出てきています。今後『マスター承認レス』のメーカーが増えてくるのではないでしょうか。
今回の加工テストでは、その『マスター承認レス』時には、完全直彫り加工で対応することで、加工時間は約1/3に削減、コストに至っては半減できることが、現に実証されたわけです。」(大塚社長)
■WorkNCの優位性について「弊社ではベストの加工を追及するために、機械・ホルダー・工具・CAMトータルでのノウハウ作りに取り組んでいます。世の中素晴らしいCAMはたくさんありますが、『出来る』と『使える』は違うのです。いくらすばらしい機能でも、オペレータ全員が完璧に使いこなせるわけではありません。理屈は分かっていても結局は『人』です。スキルに応じて技術にランク差が生じてしまっては、短納期には対応できません。そのため、どうしても技術・工程の統一が必要不可欠です。個々のスキルに依存せず、役割分担を明確にし、技術の統一化を図っていかなければなりません。そういった技術の統一化が可能なCAMがWorkNCなのです。」(大塚社長)
■段差のまったく無い加工の実現について「携帯電話の金型では1/100代、時には1/1000代の高精度が要求され、小径工具の加工では『段差』が一番の課題になります。そのため、まず回転数によるマシニングの主軸の『伸び』を考慮しました。今回使用したマシニングは、13000回転を超えると主軸がある法則に則って『伸び』が発生します。そこで、加工前には必ず30分間の暖気運転をおこない、主軸が完全に伸びきった状態にしてから、加工に入ります。また、15000回転を超えると伸び率が一定しません。そこで、すべての工具に対して、13000回転一定で加工しています。これは13000回転も必要でない工具であっても段差を無くすためには、こちらを優先しています。これらの対策により、段差を出さない加工を実現しました。

▲加工風景
■WorkNCでの小径工具の加工について「やはり荒取りの段階から『Zレベル隅部加工』を多用したことです。負荷のかかるコーナー部や、深い形状部に対して、上から下へ(等高線で)加工していくことで、工具負荷を軽減させてあります。
また、仕上げにおいて、75度以上の急斜面部を『等高線仕上げ加工』で、それ以外の緩斜面を『走査線仕上げ加工』を使用しています。さらに走査線では、45°方向で加工することによって、工具の負荷を軽減させています。
また今回は小径工具での加工において、OSG社よりいくつかのアドバイスを頂きました。
例えば、今まではアプローチの傾斜角度を2度で設定していましたが、OSG社での切削テストにおいて、1度以下の方が工具の負荷が軽減されることが確認されていますので、今回は1度で設定しました。その他にも、工具のたわみについて、刃先の負荷によるたわみ量を計算していただき、その数値を考慮してパス設定をおこないました。
その結果、今回使用したホルダーはコレットタイプですが、コレットでも十分『振れ』を押さえての加工が可能でしたし、今回の加工において、L/D=26の小径工具でも、折れは1本もありませんでした。そして何より、今回はチャンピオンデータではなく、今後の実加工でも使用できるデータで加工しています。
今回のテスト結果は、WorkNCでも小径工具での仕上げ加工に十分対応できることが実証された事例といえるでしょう。」(福島課長)
■ヒンジ部の仕上げ加工

■WXLシリーズ(OSG製)について「今回のテスト以前には、単に鉄と銅(電極)の両方が同じ工具で削れるということで、WXL工具を使用していましたが、今回のテストで、WXL工具での直彫りでも満足のいく加工ができました。
また、今回の工程では20種類の工具を使用していますが、そのうち17種類は標準品です。WXLシリーズはバリエーションが豊富なので、工具選定の際に、バリエーションの有無で困ることがありません。
さらに工具の持ちも良く、コストの点からも、今後継続使用していくことに決めました。」(福島課長)
■使用工具一覧

■今後の課題について「絶対不可能と言われていた『R0.2/首下10.5(L/D=26)』での仕上げ加工もクリアしました。今後は、後付けの60000回転仕様のスピンドルも導入予定ですし、さらなる小径『R0.1/首下10.5』『R0.07/首下10.5』…に挑戦していきたいですね。」(大塚社長)

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